第十章-後編-
ずどん、と。何かが物凄い速さですぐ横を駆け抜けて瓦礫に衝突、吹き飛ばした。
……声にならなかった。
「あは……やっぱり外しちゃった……調子、上がんないなぁ……」
攻撃を放ったのはクレイジーだった。
「クレイジー」
「ごめんね兄さん……でも僕、ちょっと限界かな」
ざわざわと殺気が恐怖を掻き立てる。
「……分かったかのような口利かないでよ」
にやりと口角を吊り上げた、
「兄さんの理解者は、僕なんだ。僕の理解者は兄さんなんだ」
――その表情があまりにも狂気的で。
「僕たちは双子で、ほら。何処にも入り込める隙なんて、無いのに」
髪をくしゃりと掴んで項垂れる。
「……邪魔を、するな……」
内側から漏れ出す赤黒い光が。
「邪魔をするなぁああッ!」
――溢れる。