第十章-前編-
いつの間にか拳が握られていた。
言い切った後で、マリオははっと自身の右手の拳を見つめて。
「……まだ死んではいないようだな」
クッパはにやりと笑った。
「一時休戦だ」
ルイージとピーチはゆっくりと立ち上がる。
「それで良かろう」
「かっこつけやがって」
マリオは今一度拳を強く握り締める。
「勝つのは俺だ」
「勝利は我が輩の為にある」
「じゃあ私も」
「僕も」
ふっと笑みがこぼれた。
……そうか。
戦うってそういうことだよな。
ラディス。
「フォックス」
……いつの間にか。頭上に影が差していた。
このままでいいはずがない。分かってるんだ自分の中で。
答えだって出てるのに。
あいつの、あの顔が頭から離れなくて。