第十章-前編-



クレシスはただ黙って見下ろしていた。

しんと静まり返った空間の、誰も息を潜めて見守る中。

「……餓鬼が」

不意にぽつりと、その本性を現した。


「ピーピーギャーギャー喚きやがって!」

ようやくといったところか、クレシスの右腕の断面に青白い光が灯ったかと思うと内側からブロックノイズのようなものが新たな右腕を生成、修復した。時を同じくしてカービィの傷口が塞がった頃、クレシスは剣を抜き取りカービィの顔のすぐ横、床に突き立てて。ひい、と小さくカービィの悲鳴。

「……俺たちはまだ何も失っちゃいない」

クレシスは苛立ちに声を荒げる。

「なりふり構うな! 今のこの間だって世界は壊れている。神様だって遠慮しちゃいねえんだ。だったら俺たちも遠慮なんかするな、奴らが高を括って生かしたこの命、燃え尽きるまで全力でぶつかって喰らいつけ!」

いつもながらとんでもないことを。

「相手は……神様だぞ……」

馬鹿げてるとでも言いたげに呆然とした姿勢でマリオが言った。

「……ああ?」

ぎろり、鋭い眼孔が睨みつける。

「敵うはずがない」
「だったら何だってんだよ」

バチバチッ、と黒の閃光が頬を迸った。

「やれ自分は玩具だのやれ何の為に生まれてきただの。そんなに自分の存在意義が惜しいか、だったら神だろうが仏だろうが畳み掛けてそいつの歴史にでっかい爪痕残してやれ! 奴らは餓鬼だ、思い知らせろ。俺たちの命は俺たちのもんだ」

腕を勢いよく打ち払って、

「他の誰のものでもねえ、譲るな!」 
 
 
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