第十章-前編-
……ああ。
思ってたよりも注目を浴びてるなあ。でも、引き下がれないかな。
「……俺は、兵士側の人間です」
ひと呼吸置いてラディスがはっきりと告げると少しだがテント内がざわついた。
「レイアーゼ防衛機関管理下特殊防衛部隊DX部隊所属、指揮、ラディス・フォン」
なかなか覚えられず、人前ではあまり口に出来なかった正式な所属名称。
「俺にはこの名以外に戦士だと証明出来るものがありません。勲章のようなものが無ければ決まった制服もない。……でも」
ラディスは左手を右の胸に当てて、
「この胸には、戦士としての誇りがあります」
ずっと憧れだった。
誰かの助けになりたいって、ただそれだけが望みで沢山の無茶をした。他人だけじゃない仲間から見てもそれは世間一般でいう馬鹿正直というやつで、死に急いでるとか早死にするぞとか思えば散々言われてきたけど。
それでも。
“ならなければよかった”とはただの一度も思わなかったんだ。
「自分が何を言ったところで状況は変わらないと思います。それで今戦場を離れている戦士が駆けつけるわけでも、……失った命が、戻ってくるわけでも」
背中を押したり、馬鹿にしながらも声をかけてくれたり。
それは変わらないはずの日常で。
違えたくない風景で。
「……でも、俺たちが必ずこの国を守ります!」
独りってこんなに怖かったんだな。
「命を懸けて、全力で!」
……皆。
「だから!」