第十章-前編-



――どういう、ことだ?

「ふ……あはっ……」

カービィはふらりと立ち上がる。

「『ゲームのキャラクター』なんだってさ、僕たち」

ぼたぼたと。血が滴るのを見てゼルダはその場に座り込む。

「っ……そんなこと。口で言っても、信じないでしょ」

足が震えている。立っているのもやっとな激痛が彼を襲っているに違いない。

動かない方がいいに決まってる。他が治療に動けないのなら俺が動いて、上着でも何でもいい。止血を――そう思って踏み出した、が。

ガノンドロフが腕を掴み、止めたのだ。

「だからこれが一番手っ取り早いかなって」

次の瞬間、クレシスは我が目を疑って目を開いた。

「ほら、ね」

カービィは口元に歪んだ笑み。

「やっぱり……死なせてくれないみたい」


傷口に青白い光が灯り、ブロックノイズのようなものが内側から、徐々に。

裂かれた肉を。細胞を生成して修復。


誰の手じゃないけれど目の前で。

――傷口は塞がり、治ってしまったのだ。


「なんだ、案外近くにいたんだね」

カービィは傷口のあった箇所を触れて小さく笑みをこぼす。

「……今のは」

ガノンドロフは腕を解放する。

「高度な魔術だ。此処に戻った時、不可解なバリアが屋敷全体を覆っていた」
「やっぱり死ねない。やっぱり生かされる」
「奴の発言が確かなら仕掛けたのはマスターハンド。万能の神たる能力のひとつ」

神様であることは確かに聞かされていた。

それが、どんな類いか。神様にだってそれとなく種類はある。でもこれが本当に、マスター自身の神としての能力なら。

「あはっ……あはは……」

そしてその特殊な能力が彼の言った、『ゲームのキャラクター』にしか対象として当てはまらないのだとしたら。
 
 
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