第十章-前編-
「……治ったんだよ」
程なくしてマリオは静かにそう答えた。
ピーチが固まってしまったのは言うまでもなく。その隙にマリオは再び手を払って右手のひらを見つめた。虚ろな目でぼうっと見つめ、下ろす。
「そんな、こと」
有り得ないに決まっている。
「待てピーチ」
今にも声を上げて噛みつきそうな雰囲気の彼女を留めたのはクレシスだった。これまでのやり取り然り、ようやく違和感に気付けたのだ。今の話が冗談だったとしてそれでもこの場に残されていた他四人全員、口を開かなかった。この状況でまさか揃いも揃っておふざけに徹底しているはずもない。
ということは、本当に?
だとして、誰に?
「何があった」
急ぐな。慌てるな。心の内で言い聞かせて冷静に問う。
「あいつから話は聞いている。双子に、接触したんだな」
辺りは気味が悪いくらいしんと静まり返っている。
「この状況はなんだ」
何故、応えない。
いや急かしては駄目だ。見たら分かるだろ、様子がおかしなことくらい――
「マルス!」