第十章-前編-
揺れが、おさまった。
彼らが近辺で暴れていたことは確かだが……まさか、地上界に降りたのか? そうなるといよいよ追うのは難しい。被害を受けたのが街だったとして範囲にもよるが航空機を出してもらえないかもしれない。此方にどんな権限があったところで上の連中はレイアーゼの防衛を優先させるだろう。……考えては駄目だ。今は。
「……、」
元扉があった場所で少しの間留まり、くっと眉を顰めて。
迷いを振り切るようにして飛び出したその先、目にした光景にラディスは声もなく立ち止まった。
「これは……」
暫く見惚れた後でようやく、口を開く。
――屋敷全体をすっぽりと包み込む青いバリア。とは一概に言っても所々で小さく波紋が広がり波打つ、それはさながら水のベールのようで美しく。
屋敷に戻った時、当然こんなものはなかったはずだ。
……現在、マスター捜索に出ていた一部メンバーが屋敷へと向かっている。敵性があれば新たに連絡を届けてその足を止めなければならない。ラディスは中距離から腕を払って電撃を放った。簡単に試す程度、そう強くないものだ。
「っ、弾かれた」
突き刺すように向かった電撃は確かにバリアに触れたが、言葉の通り弾かれて。
まさか、閉じ込められたのか……?