第十章-前編-
いつになく真剣な眼差し。
「ラディ」
「皆のこと、頼む」
妙な胸騒ぎが襲った。
それはまるでもう二度と戻らないことを、指しているような。
「……地下に降りたら伝えてくれ」
ラディスはゆっくりと肩を離して言った。
「“先に行って待ってる”、って」
――なんでそんな顔、するんだよ。
「ラディス!」
叫んだ頃には駆け出していた。慌てて追ったが、
「うおっ」
ロイとマルスに鉢合わせ。
「ラディス!」
……背中が遠ざかっていく。
「何かあったのかい?」
あいつにあんな顔をさせた原因。それが、地下にあるというのなら。
「……いや」
クレシスは部屋に踵を返して地下への扉に手を掛けた。
「ついて来てくれるか」