第十章-前編-



眩暈に近いようなものを覚えた。同時に、気持ち悪さが襲ってくる。

なんだこれ。なんだこれ。頭の中で繰り返す。


――戦いの果てに温もりを見つけた。

灰色の空は淡く彩られ、血の紋章は形を変えて。真偽の剣が過去の暗雲を払い黒の戦士は遠く夢見た未来のために。


――俺たちなら出来るよ。


「フォックス……!」

互いを励まし合うように笑って語りかけた。

何ひとつ間違いはなかったはずなのに。


「……ごめん」


嘘だと言ってくれ。

「本当に平和を願うのならそれが賢明だ。彼らは、理想の世界を作ると言った」

そんなこと、言わないで。

「今の世界だってちゃんと見ている。その上での判断だ、間違っちゃいない」


――聞きたくない。


「ラディス」


カタン、と音を響かせて。落ちたのは、拳銃だった。

「俺たちはこの世界の平和を願って戦ってきた」

首をゆっくりと反らし傾けながら。

「……よかったじゃないか」

振り向く。

「もうこれで、戦わなくていいんだよな」
 
 
7/49ページ
スキ