第十章-前編-



「だって、相手は神様だよ?」

深く被った帽子が自然と影を差し、ルイージの表情は全く窺えない。

「……敵うわけないじゃないか」

沈みきった声。

「ちょっと待ってくれ!」

尚も静まり返る室内。


皆の様子が――おかしい。


「……そうだ」

このままじゃまずい。

「マリオ、君は言ってたじゃないか。神様が怖くて大魔王が倒せるか、って」

何とかしないと。

「どんな未知の生物とも戦い、打ち勝ってきた。そうだろ!?」
「ラディス……」

マリオは項垂れていた頭をゆっくりと起こす。


「お前は、何を言ってるんだ?」


え、と小さく声が洩れた。

「もう忘れたのか。情報処理不良? バグ?」
「ま、マリオ」
「腕を捥がれたんだぞ!」 

マリオは唐突に声を上げて左手で右肩を庇う。
 
 
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