第十章-前編-
……あれから、どのくらいの時間こうしていただろう。
それほど時間は経っていなかっただろうか。遅ければ上で待機しているクレシス達が様子を窺いに来るはずだ。まだ十分、いや十五分経ったくらいか。
「……止めないと」
突発的にそう思った。
彼らに不要だと判断されたら最後、そこにあるものは跡形もなく――消される。
こんな所で立ち尽くしている場合じゃない。早く、彼らを探し出して今度こそ止めないと。でなければ取り返しのつかないことになってしまう。しんと静まり返った景色の中で少しずつ意識がはっきりと、灰色だった視界に色が戻ってきた。
「皆っ」
だが次の瞬間、目を開いた。
「……皆?」
静寂の中の違和感――
誰もその場から動こうとしない、何も語らない。
「え、」
自分は人形に話しかけていただろうか、なんてそう錯覚してしまうほど。
「……フォックス?」
彼らは表情に影を差したまま。
「ファルコ、カービィ」
糸の切れた人形のように。
「マリオ、ルイージ」
……動かない。