第九章
従来の魔術であれば或いは可能かもしれない。
そう思ったが。全て何事もなかったかのように縫い目も無く衣服の袖も手袋も全て元通りとまではいかないのだ。再生の技術というのは生物にのみ発展していて、物言わぬ静物に対する再生は図れない。……いや。そもそもの話魔術でだってそれは可能かも“しれない”範囲であって出来ない可能性の方がずっと高いのだ。
それなのに。彼は難なくやってのけた。
「嘘、だろ……」
あの力は本物だった。
そして。
「……俺たちが……『ゲームのキャラクター』……?」
嘘偽りのない真実だったんだ。
「だからさっきからそう言ってんじゃん」
崩れていく。
「あんたたちは自分たちの悲惨な運命を呪って意味もなく他人に牙を向けてたりしたけどさ。呪うまでもなく、当然なんだよね」
積み重ねてきた日常が。
「自分が生を受けて、その時たまたま選択を誤って悲劇を起こしたとか思い込んでたんだろうけど。いくら誰を責めたってそんな偶然、単なる必然であって個性的なあんたたちキャラクターを作るには避けられない演出だったってわけ」
音を立てて、崩壊していく――
「俺が、キノコ王国でトップだったのは」
「『彗星団』の皆が裏切りで罠にはめられて全滅したのも」
口々に呟く、彼らの脳裏で当時の映像が走馬灯のように巡るのだろう。
けれどクレイジーは呆れたように吐き捨てる。
「全部『設定』だよ。バッカじゃないの?」