第九章
「大袈裟な奴らだ」
マスターは確かにそう言った。
――何を言ってるんだ? 彼にはこの状況がそう映って見えるのか?
「そう騒がずともすぐに治してやるさ。そもそもの話、だ」
マスターはぱちんと指を鳴らす。
「証拠を見せるという話だったのに殺すはずないだろう」
次の瞬間だった。
――マリオの、かつて右腕があったその付け根にぽつぽつと青白い光が灯り始めたのだ。ブロックノイズが現れ、少しずつ、……何かを生成して、いや。ラディスは我が目を疑った。光が弾けて遂に姿を露わにした、それは。
「満足いただけたかな?」
有り得ない。ただそのひと言に尽きる。
けれど彼が神様なら、“この世界”の全てを生み出す創造の神なら可能なのか?
こんな……
右腕を作り出す、なんて……
「ま、マリオ……」
彼自身も目を開いて自身の右腕、そして手のひらを見つめた。それが本当に自分のもので、本物なのか。あの痛みも苦しみも確かなものであったはずなのに、だけどそれらは何事もなかったかのように失せて、血溜まりだけが生々しく。握っても、広げても痛みひとつ感じない、本当に、これは、本当に。
「――言っただろ」
クレイジーは繰り返した。
「あんたたちは『ゲームのキャラクター』なんだ。ただの人間だったらこうはいかない。感謝したら? “作ってくれてありがとうございます”、って」