第九章
淀んだ空気をリセットするつもりで発砲したのか、はたまた。
「……騙されてんだよ」
薄笑いを浮かべたその顔は心なしか引き攣って見える。
「ファルコ……」
「あんな奴らの言うこと信用すんのか、お前も!」
フォックスがぽつりと口を開けばファルコはあろうことか銃を構えた。
「ま、待ってくれファルコ落ち着」
「うるせえッ!」
完全に取り乱している。
「クレシスの傷はたまたま治りが早かった。あのチビのことだって俺たちが勘違いしていた。他の誰とも変わらないただの人間だった、そうだろ!?」
「もうやめようよ!」
ルイージが耳を塞いでその場に屈み込んだ。
「やめよう……やめようよ……こんな……こんな……」
どうしてこんなことになったのだろう。
俺はただ、目の前にいる双子の兄弟を止めたかった。理想の世界を求める彼らが、何を仕出かすかも分からない。なのに、なのにこの状況は――
「そうだな。もうやめよう」
誰もはっとして発言の主であるマスターに注目した。
「結局のところ証拠が無ければ信用もできないというのだろう」
……嫌な予感がする。
「なら、見せてやろうじゃないか」
マスターは、ニヤリと笑った。
「お前たちはいつだって俺に生かされ飼われていた。その、事実を」