第九章



……、え……?

「クレシスがダークリンクに刺されて致命傷を負ったあの日」

――忘れもしない。

自身の油断が故動きを封じられた挙げ句、目の前で友人が血を噴き出し横たわったあの惨劇を。思い出しただけでもこうして顔を顰めてしまうというのに。

「おかしいとは思っていた。心臓はひと突き、出血多量、応急処置程度では救急が来るまで持つかどうかも分からない」

マリオはぐっと拳を握る。

「本当なら“死んでいた”んだ。そんな危険な状態だったってのに……次に会った時あいつは、まるで何事もなかったかのようにピンピンしていたんだからな」

ひと呼吸置いて、彼はあの日見たままのことを告げた。

「“傷ひとつない状態”で」

……え。

「あの程度の傷、造作もない」

勝手に話が進んでいる。

「お前は」

待って。

「そういう意味での“管理役”だったんだな……!?」


ちょっと、待って――


「ッッ!」

銃声が、響いた。

「……頭おかしいんじゃねえ?」

ファルコは上げていた腕をゆっくりと下ろす。
 
 
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