第九章
揺れる瞳には絶望の色が微かに滲んだ。
一見すると不可解なものでしかないような質問。彼らが神様であれば、この世界を作ったのであれば、何を何処までという彼の質問だって、そりゃあ宇宙にこの惑星フレイアムを誕生させて今に至るまでだよ、といった回答になりそうなものだが。
「あんた、言ったよね。特別なのは俺じゃない、お前たちだって」
お前は何者なんだと問うクレシスにマスターが返した台詞。
こちら側の攻撃を全て防ぐか躱しきった上での発言。ラディスとフォックスは疑問符を浮かべたが、その場に居合わせたファルコはよく覚えていた。
「……あの台詞だけ、僕の中でずっと引っ掛かってた。本当はそのまま溶けて馴染んで忘れちゃった方がよかったんだけどあんたが神様だって正体明かした時、もしかしたら、って。でもさ、これ、辿り着いちゃいけない答えだよね」
マスターとクレイジーは黙っている。
「だからそうならないように……気付かないように“設定”してたんだよね」
……設定?
「さっきから、なに言ってんだお前」
有利と思われていた状況に少しずつ、不穏な空気が入り混じり始める。
「……どうしたの?」
カービィの拳が緩く握られた。
「あははっ怖いよねえ。じゃあ代わりに言ったげよっか」
――胸騒ぎがする。
「あんたたちはただの人間とは違う。誇っていいよ、本当の意味で特別なんだ」
クレイジーは言った。
「僕たちは僕たちが理想とする幸せな世界を目指した。その為の欠かすことの出来ない存在――それがあんたたち。『ゲームのキャラクター』なんだよ」