第九章
「なに、言ってるの?」
ラディスはぐっと拳を握り締める。
「冗談だよね?」
小さく口を開いて、言葉を呑む。
半信半疑でしかなかった情報が真実として確立される。疑いをかけるような発言を繰り返していたファルコも今度こそ黙り込んだ。その正体は神様という圧倒的且つ未知の存在であったかつての仲間を前にぎりっと奥歯を噛み締めて。
「……そいつを明かして何になる」
ここでもファルコは強気だった。
「その程度で戦意が削がれると思ったら大間違いなんだよ!」
「……そうだ。お前たちが何を企んでいようが俺たちは屈しない!」
「ああ! 神様が怖くて大魔王が倒せるか!」
フォックスに続けて、マリオが拳を構える。
「こっちはな、未知の生物と戦うことなんざ慣れっこなんだよ!」
相手が相手であるだけに戦意喪失を恐れたが、どうやら少し彼らを見くびり過ぎていたようだ。ほっとしたのも束の間、ふと見ればカービィとルイージが黙り込んだまま。カービィに至っては表情に影を差し、まるで窺えない。
「感動的だな。だが無意味だ」
「これだから俄かは」
「ンだとォ!?」
「ねえ」
ファルコはそのままの勢いで振り返る。
「うっせえ静かに――」
「あんたたち、自分を神様だとか言ったよね」
……あれ。
「“この世界”を作ったって、言ったよね」
何なんだろう。
この、妙な静けさは。
「そうだけど」
「じゃあさ」
カービィはゆっくりと頭をもたげた。
「“何を、何処まで”?」