第九章
クレイジーはくすくすと笑っている。
「……おい、マスター」
お前の弟だろ何とかしろよ、と。助けを乞うように視線を向けて。
「どう説明したものかな」
やれやれといった具合にマスターは短く息を吐き出す。
「違いない。否定もできない」
ファルコは目を開いた。
「全て前述の通り。俺は銀河を統べる創造神マスターハンドだ」
――ああ、やっぱり。
ラディスの頭の中では目まぐるしいスピードであの時、彼に見せつけられた記憶が巡っていた。確かにそれは研究者たちが望む正しい順序ではなかったものの、歪な兄弟愛が互いを生かし合った末に辿り着いた結末。
それが、今ここで直面している光景だということに。
「――覚えてる?」
クレイジーが此方を見つめている。
「あの記憶の中で兄さんは神への転生を果たした。ね、そうだよね?」
ラディスは表情に影を差す。
「おい、ラディス?」
……そうか。
そういうことだったのか。
「どうしたんだよ」
「その通りですなんて馬鹿なこと言わないよね」
……俺は。
「すまない」
あの記憶を見せられることで。
「全て、本当のことだ」
彼らが神であるという証明役に仕立て上げられていたなんて……