第九章
「おかしいねえ、兄さん」
「くくっ、そうだな、おかしいな」
誰も呆然として眺めていた。
室内には双子の笑い声が静かに、不気味に響いている。天井の照明が、チカチカと点滅を繰り返す。尚も続く不快な笑い声に、耐え切れずファルコが声を荒げた。
「おかしいのはてめえらだろうが、この化け物ッ!」
――次の瞬間だった。
「ッッ!?」
天井の照明の内ひとつが何の前触れも無しに……割れたのだ。
「僕たちはねえ。化け物じゃないよ?」
ぁ、あ。
ゆらりと頭をもたげた少年が赤の瞳に当方を閉じ込めると、その瞬間から見えない何かが腕や脚に絡み付いて逃がさず、声も出なかった。
その見えない何かというのが他でもない殺気であると気付くのにそう時間がかかるはずもなく。誰もどうすることも出来ずにただ、恐怖に足は竦んで。
「じっ、じゃあ……じゃあ何なんだよ!?」
表情に焦りの色を浮かべながら負けじとファルコは言葉を返す。
「……僕たちはねえ、“神様”だよ」
……えっ?
今度は別の理由で空気が凍り付いた。
「魂を持ち運ぶのもそれを他のカラダに移し替えるのも。人のカラダを作ったり、それだけじゃない。“この世界”を作ったのだって」
「おいおいちょっと待て。今、なん」
「聞こえなかったの?」
クレイジーは口元に笑みを浮かべたまま、
「僕も、兄さんも神様なんだよ。ヒトに出来ないことが出来るのは当然でしょ」
かくんと首を傾ける。
「……神様なんだから」