第九章



……こんな。

「よろしくねっ?」

こんなことが、本当に――

「揃いも揃って固まっちゃって。可愛いなー」


まるで対象的だった。


限りなく白に近く赤みがかかった髪。

左の瞳は紅蓮の炎を思わせるが如く、赤く。右の瞳は窺えない。同じように包帯によって、巻かれ、完全に覆い隠されてしまっていたから。

……右腕も。半ばからばっさりと斬り落とされたかのように失い、包帯が巻かれている。服装だってほとんど変わらない。それはまるで、鏡に映したかのような……

「お前、が」
「そんな怖い顔しないでいいじゃん。感謝してるんだから」

その少年はくすくすと笑って、

「ねえ、フォックス?」

フォックスはぎくりと肩を跳ねた。

横目に確かめたが微かに顔が青ざめている。醸し出すオーラから狂気そのものと見て取れる存在が今、向き合っていたのだから。そしてそれが今より少し前、自身の体を乗っ取っていたとは――

「……本物、なのか?」

間隙を抜けてマスターの元へ歩いていくクレイジーを目で追いながら、最終的には振り返ってラディスは恐る恐る口を開いた。

「何を今更」

マスターは回した右手でクレイジーの髪を掬って口付け、恍惚として微笑する。

「こんなに可愛い弟、他にいるもんか」
 
 
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