第九章
口を衝いたのはカービィだった。
「その姿。あんた本当にあのマスターで、子供に戻ったっていうの」
少年は不気味な薄ら笑いを浮かべている。
「……有り得ない。あんたが過去にゲムヲと接触していたのは本人の口から聞かされてるし、それが白の町ラグナが栄え、戦争によって廃れた何百年と昔の話だってことも知ってる。不老ってだけなら認めるよ。僕も似たようなものだから」
けど、とカービィは続けた。
「大人だった人間が子供の姿に戻るなんてそんな話、聞いたことがない。今までが不老で、成長が止まっていたというなら尚更。薬とか一時的なものなら未だしも」
少年は黙っている。
「何とか言ったらどうなの。左目失って、左腕失って、まさか今度は」
「――再会して早々質問攻め? 兄さんも苦労人だなぁ」
ビクッと肩を跳ねさせた。
「そうだよ。もう分かってるだろ」
靴音。後ろから、ゆっくりと。
「兄さんは“僕のために”沢山のものをくれた」
心臓が高鳴っていく。聞き覚えのある声に振り向くことができない。
「だから、僕は帰ってくることができた」
ぐっと拳を握り手のひらに爪を立てて硬直を解く。ラディスは振り返った。
「――初めまして」
ああ、やっぱりそうだった。
「僕の名前はクレイジーハンド。兄さんの双子の弟だよ」