第九章



コツン、と靴音が鳴り響く。

地下にこんな場所があったなんて――扉の先で迎えたのは、異様に広く設けられた空間だった。白を基調にした其処には所々でくすみや傷が刻まれている。

また靴音が響いた。扉が勢いよく閉まる。

「ッ……!」

緊張の糸がピンと張った状況下。誰も大袈裟に肩を跳ねて驚いた。

「ちょっと」
「今のは扉が勝手に」
「やあようこそお前たち」

その声に六人は慌ただしく身構えた。

「……!?」

ラディスは静かに目を開く。

「すまないな。生憎、お前たちが好みそうな茶菓子は用意してな」
「君は、マスターなのか?」

声は確かにそうだった。


けれど明らかに、姿が異なる。


記憶に色濃く残る彼の姿とはとても似つかない。

あれではまるで“子供”じゃないか。

「おかしなことを言う」

少年はかくんと首を傾げた。

「何処からどう見ても“俺”じゃないか」

限りなく白に近く青みがかかった髪。

右の瞳は蒼海を映し出したかのように、青く。左の瞳は窺えない。何故なら包帯によって、巻かれ、完全に覆い隠されてしまっていたから。

……左腕も。半ばからばっさりと斬り落とされたかのように失い、包帯が巻かれている。白を基調に青のラインが走った服装。そして何より――

「……ふざけないでよ」
 
 
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