第九章



「ひっ、」

ルイージが悲鳴を上げたのはもう間もなくのこと。

「うわああぁああ!」 

フォックスはピンと狐の耳を跳ねて振り返った。

「なっ、」

訊くよりも先。ルイージは驚きのあまり体を大きく仰け反らせ、その結果、後ろにいたファルコに衝突。上手く体勢が取れず、ファルコの体は押されるがまま後ろへ倒れかかるが一つ上の段に右足を乗せて踏み堪え、右に向かって重心を取り、壁に強打。階段を転がり落ちる、そんな惨事だけは逃れたものの。

「っあぶねーだろうが!」

壁に凭れた姿勢のままファルコは声を荒げた。

「あーもーはいはい。その辺にしてくれる声が響くから」
「ンだとォ!?」
「っ……ファルコ、本当のことだ」

今度のはよく声が響いた。フォックスに言われればすんなりと口を閉ざしたが最後小さく舌打ちを零し、半ば強引にルイージの体を押し退けて。壁に肘を付いて体を起こす途中ファルコは何かのスイッチを当てた。

「……あ」

ぱあっと辺りが明るくなる。

幸運にもファルコの肘が照明灯のスイッチに当たったようなのだ。

「これで無駄に消費せずに済むな」

誰も、明かりに釣られて見上げていた。

「そうだな……」

ほっと安堵の息をつく。暗いよりはずっとマシだと。

そんな空気が視線の先を変えた途端、一転。

「――ッッ!?」

ビクッと肩を跳ねた。

「ら、ラディスっ」

己の目を疑いつつも奪われる。

「なにこれ冗談でしょ」

ルイージは頭を抱えてその場に縮こまっていた。今でこそ明るいものの、異様たるこの光景を暗闇の中、ぼんやりと光に照らされて目にしたならば仕方ない。

異常で異端。まさかここまでするなんて。

「……マスター」
 
 
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