第九章
バタン、と思いの外扉が強く閉まった。
「ゆっくり閉めてよね」
これには少し驚いたのだろう、カービィは後列のマリオを睨みつける。
「悪かったって」
後方で赤の光が灯った。あれはマリオのファイアボールによるもの。
対してラディスは左手に電気を走らせ、青い光の球を生成した。完全に見渡せるとまではいかないがこの暗闇の中、見えないよりかは遥かにマシだろう。
「……イヤな臭いだな」
ファルコは思わず顔を顰めた。
吐き気がするほど酷いというわけではないが、同じく顔を顰めるものがある。例えるならそう、薬局店の中にいるかのよう。薬品のツンとした匂い。これで空気がこうもひんやりではなく、じとっと生温いものなら吐き気を催していたことだろう。
薬品の匂いばかりではない。
その内に紛れて生臭いような嫌な臭いが時々、鼻につくのだ。兎にも角にもここは暗闇の中、原因を探っている場合でもない。
「おいルイージ。お前適当にそこの壁照らしてみろよ」
「ええっ。嫌だなあ……」
現在、ラディス達は螺旋状の階段を足を踏み外さないよう慎重に下りている。
手すりが無いので右の壁に手を付きながら下りているわけだがファルコが提案したのはその反対側、中央を貫く太いコンクリの壁を照らせと言うのだ。
「いいじゃねえか。スイッチが見つかるかもしれねえしよ」
「ファルコ、トリ目だもんねえ?」
「うるせえっ、この」
カービィはけらけらと笑って、
「ざぁんねんでしたー」
何やってるんだか。すぐ後ろのフォックスの口から溜め息の零れるのを聞いた。
「ルイージ。照らしてみてくれ」
「えええ、兄さんがやればいいじゃないか……」
兄に言われて渋々と、ルイージは左手に緑の炎を生成し、照らす――