第九章



「――地下室?」

冷たい風が頬を撫でる。

扉を開くと直ぐの所に階段があり、そこから下りていけば何かが潜んでいるというのは気配からして間違いない。けれど違和感を感じた。なんだろう。

「……ああ」

ラディスは最後まで視線を残しながら一度、後ろ手で扉を閉める。

「その先にマスターがいるのか?」

この場に集まったのは全員ではない。

マスターを見つけ出す為、屋敷の外へ出向いている者もいる。それでもそれほど遠出ではなく都内、念のため一度屋敷に戻るように無線で呼びかけたのだが。

「それは分からない。だから全員で下りるのは良くない」

ラディスは視線を走らせた。

子供たちを連れていくわけにはいかない。いくら彼らが我が儘を言ったとしても、いや、今回ばかりはそれがよく分かっているようだ。誰一人主張せず、視線を合わせようとはしなかった。ここに来てようやく、恐怖を感じているのだろう。

リンクに限っては恐怖というより、自身の力では出くわしたところで到底敵わないと律しているようで眉を顰めていた。悟られないよう、密かに。

――なら、誰を連れて行こうか。

「フォックス、ファルコ」

まずは二人の名前を呼んだ。射撃手の腕は伊達じゃない。白兵戦も難なく熟す彼らならまずもって足手まといにはならないだろう。

「カービィ」

臨機応変に能力をそのものを変化させる、彼の特殊能力は重宝する。

「……それから」
「マスターの手掛かりを掴んだって本当か!?」

今しがた。慌てて部屋に飛び込んできたのはマリオだった。

「っはあっはあ……や、やっと、追いついた……」

追いかけてきた弟のルイージは壁に手を付いて息を弾ませている。

双子の兄弟だからこそのコンビネーション。捨て置けない戦力に決心がついた。

「……マリオ、ルイージ。以上五名、俺と一緒に来てくれ」
 
 
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