第九章
――パソコン。
ラディスは椅子に腰を下ろし、いつになく真面目な顔で向き合っていた。
カタカタとキーボードを叩いて鳴らし、マウスを操作する。しかし、四角い画面に映し出されるのはどれもパッとしない資料ばかり。ラディスは一度手を止めて、
「ユウ」
視線を外さないまま名を呼んだ。
「ん」
「念力でパスワード入力画面を引き出すことは出来るか?」
「無茶苦茶だねぇ」
カービィは思わず言った。
一方でユウは文句ひとつ並べることなく、隣にやって来るとつま先立ちになり、パソコンに触れ、瞼を閉じて念じた。こうして彼が素直に対応したのも、ラディスの質問は出来るか出来ないかというだけでそれ以降の、それ以上のことについては全く一切触れてないからという理由が最もだろう。
程なくして画面端にウィンドウが現れる。
マウスでクリックし、画面の中央に持ってきてみると……シンプルな白い背景に二十文字程度の英数字入力欄、その上には『Password?』の表示。
……言ってみるものだな。
「助かったよ、ありがとう」
恐らく、これで間違いないだろう。
微笑んで頭をぽんと優しく叩き、キーボードを構える。パスワードの不一致により入力欄を閉ざされることだけは何としてでも避けたいところだが。
「分かるのか?」
フォックスがひょいと後ろから覗き込み、
「間違うたらアカンで」
「ロックを掛けられる可能性もあるからな」
「そうでしゅよ! 一発勝負、」
子供たちが口々にプレッシャーをかける。
「男を見せろでしゅ!」