第九章
カービィがそれを受け取ると、見せて見せろとばかりに子供たちが下から顔を出しクレシスとフォックスは両脇からひょいひょいと覗き込んだ。
「……?」
怪訝そうな顔つきをしてカービィは紙を広げる。
「……これは」
真っ先に反応を示したのはクレシスだった。
「そうさ」
やがて呼吸が整ってくるとラディスは、ふーっと息を吐き出して。
「それは入隊した初日、クレシスから手渡されたこの屋敷の間取り図だよ」
――お前、すぐ迷子になるからな。
慣れない場所では好奇心に駆られながら目的の地は疎か来た道さえも忘れてしまう自身の悪い癖。世間一般で言う方向音痴。見兼ねて初日に渡された、間取り図。
「へえ……」
「マスターの部屋を見てくれ」
子供たちが爪先立ちになってまじまじと見つめる最中クレシスは悟る。
「……そういうことか」
続けてカービィとフォックスは小さく目を開いた。
「なっ?」
ラディスはくすっと笑う。
「おかしいだろ?」
間取り図と比べて部屋の面積が一致しない――
感じた違和感はこれだったのだ。
この間取り図を頼りにしていた自分はもちろんのこと、クレシスは受け取った時と手渡して横で眺めていた分には間取り図をぼんやりと覚えている。ユウに至っては作った本人だ。違和感に囚われ動けなくなるのも当然である。