第九章
扉より向かって右側にはシングルベッド。掛け布団は乱れている。
左側には難しそうな本や資料がぎっしりと詰まった棚(雑に仕舞ってあるのは子供たちが片したからだろう)が一つ、よく分からない薬品や見るからに不気味な色をした液体の入った試験管など実験器具の置かれた棚が一つ、クローゼットが一つ。
「……?」
薬品の匂い。
「どうしたんだ?」
ラディスは自身の鼻に触れてこう訊いた。
「薬品はその棚の上にある物だけか?」
特別鼻が利く体質ではない。嗅覚に関してはフォックスの方がアテになるだろう。
ただ、何だろう。――以前にも増して匂いが強い気がする。
「なんだここにいたのか」
現れたのはクレシスだった。
一斉に視線を向けられたが既にへとへとな様子の子供たちを捉え、ここでもまともな手掛かりは無しかと悟り目を細めたが刹那。
「……?」
何かに気付いて視線を上げる。
「どうかした?」
今度はカービィが怪訝そうに訊ねた。
「いや……」
少しの間を置いてクレシスは疑問を答える。
「こんなもんだったか、って」