第九章
見落としているのか?
「もーやだぁ!」
遂にリムが投げ出していつもマスターが座っていた厚みのある椅子に、勢い付けて飛び込んだ。ぐるりと一回転、肘掛けに身を乗り出すような格好で足をバタバタ。
「疲れた疲れた疲れたあああっ!」
「はー、ゆうて俺も限界やでホンマ」
「みっともないですよ。戦士だというのに情けない……」
どのみち子供たちには長く続かないであろう作業だとは思っていたが。
「僕もちょっと休憩。ていうか、他の場所探した方がよくない?」
そう言ってカービィが視線を向けた先にいたのはユウである。
「サクッと洗って別の所探そうと思ってたのにさ」
ユウは黙っている。
「絶対にこの部屋が怪しい、何かあるって」
「――だって! 本当なんだ!」
溜め込んだものを吐き出すかのような勢いでユウは顔を上げた。
「ここが彼の部屋だからという単純な発想とは断じて無い」
ユウは視線を落としてズボンをくっと掴む。
「だが、分からない。何を見落としているのか」
これだからね、というようにカービィはフォックスと視線を交えて呆れ返った。
何だろう。
分かる気がする。
ラディスは改めて部屋の内装を見渡した。
――カーテンの開けてある窓辺、背を向けるようにして置かれた厚みのある椅子とその前にパソコンデスク。パソコンは、最新型のデスクトップだろうか。