第九章



話している間、ファルコは何度も小さく声を洩らしたり口を挟もうとした。その度クレシスやフォックスが落ち着いて話を聞けと代わる代わる宥めたので妨害にまで至らなかったものの、……あれが本来の反応というものなのだろう。

「……マジかよ」

話を終えてから少しの間を置いて、ファルコは顔を顰めた。

「じゃあ、本当に」

両膝に乗せた拳をぐっと握って、

「あいつら兄弟で神様だってのかよ……!」

――ゲムヲが、彼らに対してどう説明したのかは分からない。

「んなこと信じられるかッ!」
「ファルコ……」

フォックスは割と落ち着いていたがやはり、信じられるはずもないのだ。こうして話をしておきながら裏切るようで申し訳ないが自身半信半疑といったところ。


マスターの見せた映像が全て、妄想による偽りだったとしたら?

クレイジーの存在がいわゆるコンピューターウィルスに似たもので人の精神や身体を支配し、操る、元々実態の持たないそういった生き物だったとしたら?


そう。何より証拠が無い。

証明してくれるであろう唯一の人物も行方不明。……だが。

「……、」

ゲムヲが何かを知っている。

「そいつはラグナの町で一度マスターに会っている」

聞くよりも先にクレシスが語り出した。

「……! じゃあ、」
「マスターが異世界人(イレギュラー)であるということに嘘偽りは無いだろう」

……あれ?

まただ。また同じ感覚、なのに辿り着かない。


答えではなく、疑問そのものに。


「……おかしいだろ?」
 
 
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