第九章



意見を迷わせている様子のファルコの隣にクレシスが並んだ。

が、彼に限っては酷く警戒した様子もない。ファルコは恐る恐るホルスターから手を引いた。此方を見つめるフォックスに視線を返し、ふっと逸らす。

「……本物なんだな」


それにしても廊下を歩いてる際にも感じていたが屋敷の中が妙に静かだった。

降り頻る雨の音が小さく響いて聞こえるくらいに。

「……マスターと会った」

ソファーに座り、向かいのファルコとクレシスにラディスはそう話を切り出した。

「色んなことを聞かされたし、見せられたよ」

ラディスは視線を落とす。

「……これではっきりと分かった。彼は、彼らは次元が違う」

程なくして姿を消していたゲムヲがリビングに戻ってきた。食堂からわざわざ運んできたティーカップをお盆に乗せたままローテーブルの上に置いて、ティーポットから紅茶を注ぐ。とぽとぽと静かな音がいやに響いて。

「俺たちも、話を聞かされた」

そう言ってクレシスが目を向けたのはゲムヲである。

「実際のところは信じていない。だが照らし合わせて、合致するなら話は別だ」

それが賢明だろう。何処まで聞かされたかは知らないが何となく分かる。

信じられるはずがない、と。

「……話してくれ」

クレシスはいつになく真剣な顔つきで密かに拳を握った。対して、ファルコは未だ疑心暗鬼に包まれ表情を曇らせている。

ラディスはフォックスと横目に視線を交わし、小さく頷くと口を開いた。……
 
 
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