第九章
「っあれは」
門をくぐろうとして驚いた。――玄関の扉が破壊されてしまっていたのだ。
壁は表面が剥げたり幾らか崩れてしまっており、外からでもエントランスホールの様子が一部窺える。そこに人影を見てラディスは駆けつけた。
「……ゲムヲ」
居たのは、まるで自分たちの帰りをじっと待っていたかのように立ち竦むゲムヲ、ただ一人だった。相変わらずの無言無表情、ラディスはゆっくりと歩み寄る。
「一体なにが、っ」
ゲムヲはスケッチブックにさらさらとペンを走らせて、返す。
「……『リビングに来て』?」
追いついてきたフォックスを見てもゲムヲは驚かなかった。
先導するようにして前を歩く彼の後ろをついて歩き、リビングに着いてみるとそこにはクレシスとファルコ、二人の姿が。今朝、フォックスも含めて任務に同行したメンバーの再会というわけである。
「……ラディス、ッ!」
気付いたファルコは驚き思わずソファーから立ち上がった。一方で窓際に立って雨空を眺めていたクレシスは音に釣られて振り返る。
そして、目を丸くした。
「……お前っ」
「ま、待ってくれ!」
顔を顰めたかと思えばその手は銃の仕舞われたホルスターへ。
慌てるが反して冷静にゲムヲはスケッチブックを返す。
「……本物?」
見計らってフォックスが一歩、前に出た。
「確かに証明はできない。けどお前なら分かるだろ」
ひと呼吸置いて真っ直ぐに見据える。
「……ファルコ」