第九章
ここでも少しの無言が続いた。
どんな顔をしているのか、気になって視線を向けようとしたその時。
「“信じろ”」
その台詞にラディスは目を丸くする。
「……お前の口癖だろ」
はたと目が合って、フォックスは柔らかく笑いかけた。
「だったら信じようじゃないか」
それまで抱えていた不安が、恐怖が。
胸の内がふっと羽根のように軽くなって。
……安心した。
「それに」
ラディスは疑問符を浮かべたが、
「いや、後にしよう。まずは聞かせてくれ」
今からというつもりでもなかったのだが。
だがしかしフォックスにも思うところはあるようだ。話を照らし合わせて、それが一致するのなら後々屋敷の皆に説明する際余計な手間がかからずに済む。
「フォックス」
「ん?」
「信じられないかもしれないが――」
「そういうのは無しだ」
ラディスは頷く。
「……じゃあ話そう」