第九章
乾いた音が二度、鳴り響いて視界が暗転。
その後も同じ音が何度か鳴り響き、度に体が跳ねた。意識がぼんやりとする最中で研究員たちの声が聞こえる。
ゆったりとした靴音。反して荒い息遣い。次第に近付いて、止まって、
ブツッ。
「……は」
思わずそんな声を洩らした。
視界は暗転。外部は疎か彼自身の意識も切断されてしまった。……続きは?
まさか、死んだのか?
「死なせないよ」
暗闇の中を声が響き渡る。
「害なすものは全て破壊し尽くす」
赤い一線が乱雑に暗闇を駆け、切り取られた世界から白い光が射し込む。
妙な光景にただただ目を奪われるばかりだ。が、ようやく理解した。
この瞬間が全ての始まりだったのだ、と。
「例え、人の目には映らない可能性(フラグ)でも」
振り返ると、そこには頭を垂れた少年。
「兄さんは殺させない」
ゆったりと頭を持ち上げて、瞳に赤く光を宿す。
「――破壊神(ぼく)が守るから」