第九章



乾いた音が二度、鳴り響いて視界が暗転。

その後も同じ音が何度か鳴り響き、度に体が跳ねた。意識がぼんやりとする最中で研究員たちの声が聞こえる。

ゆったりとした靴音。反して荒い息遣い。次第に近付いて、止まって、


ブツッ。


「……は」

思わずそんな声を洩らした。

視界は暗転。外部は疎か彼自身の意識も切断されてしまった。……続きは?


まさか、死んだのか?


「死なせないよ」

暗闇の中を声が響き渡る。

「害なすものは全て破壊し尽くす」

赤い一線が乱雑に暗闇を駆け、切り取られた世界から白い光が射し込む。

妙な光景にただただ目を奪われるばかりだ。が、ようやく理解した。


この瞬間が全ての始まりだったのだ、と。


「例え、人の目には映らない可能性(フラグ)でも」

振り返ると、そこには頭を垂れた少年。

「兄さんは殺させない」

ゆったりと頭を持ち上げて、瞳に赤く光を宿す。

「――破壊神(ぼく)が守るから」
 
 
40/92ページ
スキ