第九章



どうして、気付いてやれなかったのだろう。


――頑張るね。


いつも一緒に居たはずなのに、そんな些細な変化にさえ気付いてやれず。

「……痛かったよな」

血溜まりに浸るのも構わず両膝を付いて呆然と抱き起こした。

頭の重みで首が仰け反るのを受け止めてうっすらと開いたままである瞼に手のひらを乗せて下ろし、光を失い濁った瞳を閉じ込める。

破裂によって皮膚は千切れ、赤濡れた肉が曝け出されて。

「っ、……ぉ、ええ……ッ」

研究員の一人が嘔吐した。


――俺がもっと早く気付いていれば。


「クレイジー」

繰り返す。

「クレイジー」

何度も。

「クレイジー」


……何度も。


「どうするのよ、これ」
「……どうするったって」
 
 
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