第九章
……そうだよね。
「ほら」
兄さんが僕を殺させないと言うのなら。
「もう寝ろ」
僕だって、同じ。
「明日も早いんだから」
兄さんは僕が殺させない――
「……うん」
僕は兄さんの腕の中で笑った。
「“頑張るね”」
――それが最期だった。
「……ん」
その日は研究員のばたばたと駆ける足音と声が騒がしく目を覚ました。
いつだったか、こんな風に五月蝿かった日は博士の指示が出るまで弟と同じ布団の中、携帯用ゲーム機で対戦をしたりしながら暇を潰したっけ。……
「クレイジー?」
違ったのは。
隣に居るはずの弟がいなかったということくらいで。
「……クレイジー?」
ただそれだけのことが。どうしようもないくらい不安で。