第九章
僕と兄さんが、何だよ。
どうしてこのタイミングで、僕たちの名前が――
「決行する」
次の瞬間、男ははっきりと言った。
「邪魔な輩は居なくなった。今度こそ成功させるぞ」
慌てた様子で同期の男、
「繭化実験はリスクが高すぎる。現にあの双子だって妹は“シンジュウ”に喰われ、その様子を目にした姉は半狂乱で暴れ回った後、お前に――」
「だが今度の双子は優秀だ」
銃口が向けられる。
「……前回はそれより劣っていただけに過ぎない」
「分かった、分かったよ。今度も信じよう」
「ふ、持つべきものは何とやらだな」
冗談じゃない、と同期の男が本当に小さく、ぽつりと呟く。
「……で、どうするんだ?」
「俺だって前回から何も学んでいないわけじゃないさ」
男はようやく拳銃を懐に仕舞った。
「彼ら双子は異常なまでに互いを尊重し、信頼しあっている。前回のような結果を招いた原因がそれにあたるのであれば今度は『双子は二人でひとつで無ければならない』という固定概念を切り捨てた上で実験を行う」
え、待って、それって。
「引き離すのか?」
なんで。
「成功すれば晴れて双子は“二人でひとつ”だ。結果だけ見れば問題ないだろう?」