第九章
その理由はすぐに分かった。
……これが、これこそが証明なのだ。マスターは確かに、弟であるクレイジーの魂を体内に宿していた。それは決して思い込みが創造した偽りのそれではなく、現に今、記憶を共有してここに映し出している。
――カミサマプロジェクト。
現時点でのマスターとクレイジーは特殊な能力を持った双子。そして、今は?
「……まさか」
扉の隙間から微かな光を差している。僕は何となく足を止めた。
声が聞こえるけど騒がしいな。博士たちは大変だな、いつもいつも夜遅くまで研究や実験に時間を絶やして。それでもって僕が僕の勝手で誰かを殺しても顔色ひとつ変えやしない。成果が得られれば十分なんだろう。新入りは別として。
「彼らにはまだ早すぎます!」
……博士?
「子供相手に成果を求める行為は無謀だと?」
「そうは言っていません、ですがもう少し様子を見て日を改めるべきだと」
「お前も随分と出世をしたものだな。この私に意見するというのか」
なんか怒ってるみたいだけど。
「権力を盾に己の意見を突き通そうとするのは貴方の悪い癖だ」
「このプロジェクトを立ち上げたのは私の父だ。最高権力者として当然だろう?」
光が影差さない位置へそろりと近付いて、聞き耳を立てる。
「……だからって!」
平手で力強く机を叩いて博士は叫んだ。
「彼女たちを殺すことなかったじゃないですか!」