第九章



――シンクロ率?

「いけない」

研究員の女性は袖を捲って慌てた。

「採血の時間だわ」

ぎくりと肩が跳ねる。

まだだ、もっと情報が欲しい。妙に胸を騒がせる、真相を。

「A-405、406」
「はぁい」

シンクロ率とは?

「マスター、クレイジー」

繭化実験と関係があるのか?

「お前たちも来なさい」


トロべとブルベは――


「……兄さんが困ってる」

次の瞬間だった。

「えっ?」

赤く瞬いた斬撃が乱雑に放たれて、女性研究員の身体を裂いた。状況を掴めず声を洩らした頃には次の斬撃が飛んできて、食い込み――刎ねる。

「邪魔しないでよ」

残った男性研究員は急ぎ、壁に設置された非常ボタンへ。


「兄さんの、邪魔をしないで」


血の匂いがする。

「さて。意図せず時間に余裕が出来てしまったわけだが」

俺はクレイジーの頭を優しく撫でた。

「……続きを」
 
 
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