第九章
「ぼくたちのことが載ってた」
「それって――」
俺とクレイジーは同時に身を乗り出した。
「定期的に受ける検査の」
「戦闘時の能力を分析した」
双子の兄はそれまで汗を拭っていたタオルを膝の上に置いて答える。
「……後者だよ」
厳密には検査結果だって記されていた。
けれどそれ以上に、固有能力について細部まで記されていたから。
「……でもそれって普通じゃないの?」
クレイジーの言うとおり。俺たちは監視されているのだ。時には優しく、甘やかされながら。この場所で飼われている、といっても過言ではない。
十年以上此処での生活を強いられている者もいる。……全ては神へと変化を遂げた子供に己の、いや人間の途方もない望みを成就させ、世界の確立を図る為。
そんな何処ぞの悪が企んだ世界征服とそう変わらない、ただそれだけの為に彼らはまだまだただの子供でしかない俺たちに媚びを売りながら割れ物を扱うかのような姿勢で管理と育成を飽きることもなく続けている。
つまり俺たちのどんなデータが細部まで打ち込まれていようとそれが、それこそが当然であり普通なのだ。ひとつの誤りも許されない大事な情報なのだから。
「各能力値を表したグラフ」
「精密な検査結果による育成論」
双子の兄妹は口々に告げた後で最後、口を揃えた。
「……シンクロ率」