第九章
「優秀な遺伝子を掛け合わせて人工的に神様を造り出すこの研究の総称が、カミサマプロジェクトだってことはもう知ってるよな」
頷いて返す。
「あたしたちが神様になるには?」
口を開こうとして黙り込んだ。
分からない。そういえば俺たちは、日々戦闘を繰り返しては変わらない食事と睡眠を均等に与えられ、異常が発生してないか身体の隅々まで検査を行って、それで、もう八年の時が経過した。何が変わった? 何を得られた?
――失ったものは?
「内緒だよ」
双子の妹は声を潜めた。
「研究員の人がパソコンに打ち込んでいる内容を見たことがあるの」
「……どうやって?」
「そんなことしたら怒られるんじゃ」
続けて、双子の兄はさらりと答える。
「睡眠薬を忍ばせておいたからな」
ただの子供ではない。薬品の匂いに囲まれて生まれ育った子供だ。
そういった行為に躊躇は存在しない。そもそもの話、隙さえ窺えばいつだって誰も殺めることが出来るのだ。
「……内容は?」
だから大して驚かなかった。パソコンの画面を前に肩を寄せて、話し込んでいる様子の研究員を尻目に気にしつつ、その真相に迫るべく静かに息を呑む。