第九章



カシャッ。

その微笑ましい光景は不意のシャッター音と同時に一枚の写真の内へとおさめられ、遠ざかって真っ暗闇の中にぽつりと浮かんだ。

――幸せ?

写真の端に火が灯る。


――何処から、何処までが?


ぼうっと燃え盛って同じく闇と化す。

目に映る光景にラディスはただ呆然とするだけだった。これを見せられるよりも前、マスターの発言が気掛かりだ。彼が惨状と語った記憶というのは。


――死んだって聞いたけど。


ラディスは振り返る。

「……なんだよ、それ」

タオルで汗を拭う手を止めたのは弟のクレイジーも同じだった。

「繭化実験。知ってるだろ」

俺とクレイジーは顔を見合わせる。

「……知らないの?」

その双子の兄妹は同じ顔で驚いたように目を丸くした。
 
 
21/92ページ
スキ