第九章



弟が俺の手を強く握った。

分かってる、確認するまでもない。俺たちはそんな微々たる可能性に、童心を犠牲に様々な望みをいつか巡るであろう未来に馳せて戦ってきた。

「……問題ありません」

研究員の男はうんと頷いて俺と弟を振り返る。

「行きなさい」


――ああ。可哀想に。


「随分な自信だな……」

これまでの光景はもちろん、ラディスも眺めていた。

マスターの心情に関しては例え別の何かに気を取られていたとしてもご丁寧に頭の中まで響いてくるのだ。しかしこの記憶は何処まで続いているのだろう。

この記憶の中で、まだ目にしていないものの分かってることが二つ。ひとつは弟であるクレイジーの肉体が失われていたということ。そしてもうひとつはマスターが本当の意味で神様であるということ。……


惨状、というのは前者に関する記憶を指しているのだろうか。

それにしたって、これは誰もが疑問に感じただろうが肉体は失われたのに魂だけが残っていたというのはどうも気掛かりだ。

死んだ相手から魂を抽出? 死霊使いじゃあるまいし。

「……?」

ふと、研究員の女性が打ち込んでいるパソコンの画面が目に入った。

どうやら此処で育成されている子供たちの能力を簡単にまとめた表らしい。
 
 
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