第九章
……それでも。
「検査の結果が出ました」
俺と、弟が。
「共に基準値を確認」
負けるわけがない。
「なぁんだ」
トロべは挑発的に嘲るように笑った。
「病弱読みで不戦勝狙ってたのにな」
「と、トロべちゃん!」
「いいのよ。そりゃ調整には必要不可欠なんでしょうけど」
研究員たちはカルテを手に話し込んだり、パソコンと向き合ってて気付かない。
「身体値の測定なんて物の序で」
トロべは硝子越しに窺えるステージを見つめる。
「本当の目的は」
「――如何にそのペアが勝ち抜けるか」
俺は弟の手を強く握り締めた。
「安定した勝率の高さ。期待を裏切らない優秀な能力値」
「その功績がプロジェクトに認められれば」
神様になれるかもしれない。
「……知ってたんだ」
トロべは振り返る。
「あくまで可能性だけどね」