第九章



ラディスはぎくっとした。

彼らが遺伝子提供により研究所で生まれ育ったということもそうだが、今の発言と。そして不可思議な呼び名から察するに――


「カミサマプロジェクト」


研究員の男はぴたりと足を止めた。

「優秀な遺伝子を掛け合わせ、人工的に神様を造り出す研究」

大きな扉の前に。

「それにしたって捻りがないわね。だっさい名前ー」
「ちょ、トロべちゃん!」

少女が二人。

「また貴女たちは貴重な研究資料を盗み出して!」

遅れてやって来た女性がひょいと少女の手から紙を奪い上げる。

「トロべちゃん、トロべちゃん」

そこで少女は初めて此方の存在に気付いたようだった。

「あんたたちが今日の相手?」

弟の手がそろそろと伸びてきて……握る。

「……知らない」
「ふぅん。じゃあ名前は?」
「兄さんがA-002、僕が003」

途端、少女はくすっと笑って。

「ださい名前。まるで実験動物じゃない」
 
 
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