第九章
◆第九章『崩壊』
むかしむかし、あるところに双子の男の子がいました。
「……ん」
力を合わせれば誰よりも強く、激しく。
「なんだ……?」
二人には夢がありました。
次に目が覚めた時、ここがあの森の中じゃないことにはすぐに気付いた。
声はすれど、見渡す限りの白。のっそり上体を起こして瞼を擦ってはみるが景色は変わらず一面の白に包まれている。天井も、床も。
自分というキャラクター以外の色塗りを怠ったのかと突っ込みたくなるくらい。
「あははっ」
何かが横を駆け抜けて、ラディスははっと振り返った。
赤い髪の少年がぱたぱたと駆けていく。勢いを緩めて振り向きながら、
「兄さん兄さんっ、はやくぅ!」
くすっ。小さく笑う声がすぐ隣で聞こえてラディスは視線を辿らせ、見上げる。
「はいはい」
蒼く澄んだ瞳と。柔らかな艶を魅せる青い髪。
見間違えるはずがなかった。もちろん自分は彼の子供時代の姿を見守ってきたわけでもアルバムを通して目にしたことがあったわけでもなかったのだが。
確信に近いものを持っていたのだ。少年が歩いていくのを呆然と見つめながら。
「……マスター?」
ラディスはぽつりと、その名を口にする。