第八章



……え?

「その目に映る惨状を見届けたら、後はお前の好きにするといい」

声が出ない。

「……勘違いするな」

添えられたそれぞれの指先に青い光がぼんやり灯る。

「選択しろ」

頭の中に流れ込んでくる。その何かは、中でじんわりと熱を広げて、躊躇なく視界をクローズダウンさせていく。意識が遠退いていく。手を伸ばしたつもりだった。


待ってくれ! マスター!


――ラディスの叫びは。

声にならないまま、闇の中へ呑まれて消えた。……


「……、」

足下には見知った男が二人、地面に横たわったまま動かない。

強制的に眠らせてしまう結果となったが、此方の言動に対して口を挟まない辺り、弟の意識は未だ深い眠りにあるらしいことに安堵しつつ。

足を踏み出し、森の切れ目へ向かう。数秒と待たず辿り着いた其処からは、広大な世界を一望できる。思い詰まった時などにはよく訪れるお気に入りの場所だった。


――惑星フレイアム。

太陽系、第三惑星『地球』から何億光年も離れた宇宙に浮かぶ惑星。


まだ幼い頃、自分と弟が遠く望んだ夢の楽園。


神が未熟だったが故、平等とは名ばかりの力が弱きを捩じ伏せる醜い世界へと成り果てた。そしてようやく。世界は破壊と創造によって更生を約束される。


もうすぐ世界は完成を遂げるだろう。


――神が理想の赴くがままに。
 
 
 
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