第八章
……動け。
「誰にも邪魔はさせない」
感情が高ぶっている。
「兄さんが理想の世界を創造する。その為なら、僕は」
このままじゃ。
「阻む全てを破壊し尽くす」
――殺されるッ!
「……え」
声を洩らしたのはフォックスの方だった。
己の身を庇うようにして構えていた腕を恐る恐る下ろし、反射的に閉じていた瞼をそっと開いて確かめる。すぐ目の前で見覚えのある青い髪が揺れるのをラディスはただ目を丸くして眺めていた。
「え、ぁ、あれ」
一方でフォックスも目を開いて固まっている。
「……兄さん?」
――そこにいたのはマスターだった。
「まさか」
「クレイジー」
「何でだよッそいつは僕たちを」
「話を聞くんだ」
まるでラディスを庇うように立って、マスターは右腕を差し出している。宗教的な愛で兄に執着する弟にしてみれば目が眩むような光景だっただろう。
「……何? 庇うの?」
瞳の色は相変わらず落ち着かない。
「そうじゃない」
「なんだ。よかった」
愛らしくにこりと笑ったが、それも束の間。
「だったら殺させてよ」