第八章
暫し沈黙が流れて。先に口を開いたのはフォックスの方だった。
「こいつ誰?」
攻撃的な口調に思わずぎくりと肩を跳ねる。
「ラディス・フォン。特殊防衛部隊、DX部隊を統率するリーダーだ」
「へえ、じゃあ結構強いんだ」
ゆらりと向けられた視線にぞわぞわと悪寒が走って体が凍り付く。ぐさぐさと突き刺さる見えない凶器はもう幾度となく感じてきた。
間違いない――これは殺気だ。
「やめておけ」
構えを取るべきか思案していたその時、マスターが留めた。
「これ以上はそいつの身が持たない」
――発言が意味するのは、フォックスの体に宿された魂の強大で有り余るばかりの恐ろしい力。それがどれほどのものか、知る機会はたった今絶たれた。
「……ふぅん」
この先、訪れないのであれば。
「つまんないの」
それでいいのだろう。
「で、兄さんに何の用?」