第八章
「大切なチームメイトだよ?」
思わず青ざめて、ファルコはその手を振り払う。
「ほら。ぶっきらぼうに見せて、本当はチームの皆を家族のように想ってる」
「知ったような口をッ」
――違和感。
「だからあんたには此処にいる誰も殺せない。僕たちも含めて、ね」
イレギュラーにしては知りすぎている。
ただの記憶の共有じゃない。少なくとも自分にはそう窺えた。手に取って目で確かめ耳で聞く程度の情報とは違う、それ以上の何かを彼らは知り尽くしている。
これまでの言動からただ単純な推測として、少なくとも人間ではないはずなんだ。
なのに。マスターの言葉が頭の中で妙に引っ掛かってくる。
――どうして気付かない。……特別なのは俺じゃない、お前たちだ。
「あまりからかってやるな」
マスターは呆れたように息をつく。
「言ったところで、どうせ分かりはしないさ」
「なんだ。そうなんだ」
沈黙掻き切る、雨足は容赦ない激しさを増していく。
今度こそ止められることなくマスターの元へ駆け寄ったフォックスは、いつになくぼうっとしている様子の彼に首を傾げた。と、マスターは口を開く。
「知ろうとするはずはないのに……」